Shin Takamatsu Architect & Associates

 

歯科医師が住む木造の住居兼歯科診療所を建て替えることになった。敷地は極めて交通量の多いふたつの幹線道路が交差する北東の角地である。苛酷な環境に永年堪え続けてきた施主は設計者に極めて防御的で頑健な建築を求めた。いわば要塞である。この要請は、常に密かに抱いていた都市建築に関する考え方を大いに挑発することになった。およそ、都市建築である限り建築の外部と内部は全く異なる次元で考えるべきではないかというものである。つまるところ、外部は唯一都市の文脈との関係に基いて考案されるべきであり、内部は十全に施主自身のミクロコスモスの発現として構想されるべきであると言ってよい。この際、建築は全くの仮面と化す。施主の苛烈極まりない要請が、設計者にまたとない建築的冒険を許したという次第である。思えば都市の起源は城塞以外のなにものでもない。

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